亭主学校

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亭主学校』(仏語原題:L'École des maris )は、モリエール戯曲1661年発表。同年6月24日初演。

当時モリエールの劇団を庇護していたオルレアン公フィリップ1世に捧げられた[1]

登場人物

  • スガナレル…アリストの弟
  • アリスト…スガナレルの兄
  • イザベル…レオノールの姉妹。スガナレルが面倒を見ている
  • レオノール…イザベルの姉妹。アリストが面倒を見ている
  • リゼット…レオノールの小間使い
  • ヴァレール…イザベルの愛人
  • エルガスト…ヴァレールの下男
  • 警部
  • 公証人

あらすじ

舞台はパリの広場。

第1幕

アリストとスガナレルの会話から始まる。この兄弟は対照的で、服装の流行や、面倒を見ている娘たちの扱いを巡って、たびたび衝突している。アリストはレオノールに自由を与え、好きなように行動させているが、スガナレルはイザベルの自由を奪って家に閉じ込め、家庭仕事に専念させている。ヴァレールがエルガストを伴って、スガナレルのお近づきとなり、イザベルに会いに行こうとするが上手くいかない。

第2幕

ここでイザベルは策を打つことにした。スガナレルにヴァレールが自分に恋をしていることを話し、断りに行かせたのだ。帰ってきたスガナレルに「ヴァレールから手紙が届いた」と嘘をつき、それを返しに行かせるために再びヴァレールのもとへスガナレルを行かせるが、その手紙はイザベルが認めたものだった。「スガナレルとの結婚が嫌でしょうがないので、助けてほしい。どうか色よい返事をお待ちしています」との内容である。この計略が首尾よく進んで、イザベルはヴァレールに直接会い、自分の本心を伝えることに成功するが、スガナレルだけはそれに気づかない。それどころか、スガナレルは6日後のはずだった結婚を、明日に早めようと言い出した。焦るイザベル。

第3幕

場面は夜になった。イザベルはスガナレルと結婚するくらいなら死んだほうがマシだと覚悟を決め、大胆な賭けに出る。レオノールのふりをして、ヴァレールの家へ行こうというのである。こちらも上手くいったが、スガナレルはその後をつけていた。しかし真っ暗闇でよく見えなかったため、ヴァレールの家に入った娘がイザベルとは気づかず、レオノールだと思い込むスガナレル。レオノールの不貞行為を目撃したスガナレルは、このまま密会している2人を結婚させてしまおうと警部と公証人を呼び、鼻を明かしてやろうとアリストをも呼び寄せるが、そこへレオノールが姿を現した。状況がよく呑み込めず、混乱する一同であったが、イザベルの登場によってすべてが明るみとなる。ぐったりした様子のスガナレル。

成立過程

プビリウス・テレンティウス・アフェルの「兄弟(Adelphoe)」や、ピエール・ド・ラリヴェの戯曲、ジョヴァンニ・ボッカッチョのコントを粉本としている[2]

「女性の教育をどのようにすべきか」という題材を扱っている点で、翌年に発表された「女房学校」とほぼ同じであるが、主人公の性格描写など作品の技術面において「女房学校」の前段階的な作品である[2]

主人公であるスガナレルの女性に対する強引なやり方は、婦人たちに対して優雅な態度をもって接しようとする「ギャラントリー(Galanterie)」が栄えた時代にいささかふさわしくないもののように思われるが、当時はフロンドの乱が収まり、絶対王政の基礎が固まったばかりの時期であり、フランス社会の文化的レベルは低いものであったため、このような描写であっても不自然ではない[3]

日本語訳

  • 『亭主學校・女房學校』 鈴木力衛訳、《世界文庫》、弘文堂書房、1940年 1947年(加筆しての再版)
  • 『亭主學校』 川島順平訳、(モリエール全集 第三卷 所収)、中央公論社、1934年
  • 『亭主學校』 鈴木力衛 訳、(モリエール選集 2 所収)、南北書園、1948年
  • 『亭主學校』 鈴木力衛 訳、(モリエール名作集 所収)、白水社、1951年
  • 『亭主学校』 鈴木力衛 訳、(世界古典文学全集 47 モリエール篇 所収)、筑摩書房、1965年
  • 『亭主学校』 鈴木力衛 訳、(モリエール全集 2 所収)、中央公論社、1973年
  • 『お婿さんの学校』 秋山伸子訳、(モリエール全集 3 所収)、臨川書店、2000年

翻案

  • 『良人學校』草野柴二訳、(モリエエル全集 上巻 所収)、金尾文淵堂・加島至誠堂、1908年
    • 元版 『脚本良人學校』草野柴二訳、明星 1907年6月号掲載


脚注

  • 「白水社」は「モリエール名作集 1963年刊行版」、「河出書房」は「世界古典文学全集3-6 モリエール 1978年刊行版」、「筑摩書房」は「世界古典文学全集47 モリエール 1965年刊行版」。
  1. ^ 白水社 P.611
  2. ^ a b 白水社 P.618
  3. ^ 白水社 P.619,20
戯曲
1645年? 飛び医者 1650年? ル・バルブイエの嫉妬 1655年 粗忽者 1656年 恋人の喧嘩 1658年 恋する医者 1659年 才女気取り
1660年 スガナレル 1661年 ドン・ガルシ・ド・ナヴァール 1661年 亭主学校 1661年 はた迷惑な人たち 1662年 女房学校 1663年 グロ=ルネの嫉妬
1663年 女房学校批判 1663年 ヴェルサイユ即興劇 1664年 強制結婚 1664年 ぼうやのグロ=ルネ 1664年 エリード姫 1664年 タルチュフ
1665年 ドン・ジュアン 1665年 恋は医者 1666年 人間嫌い 1666年 いやいやながら医者にされ 1666年 メリセルト 1667年 パストラル・コミック
1667年 シチリア人 1668年 アンフィトリオン 1668年 ジョルジュ・ダンダン 1668年 守銭奴 1669年 プルソニャック氏 1670年 豪勢な恋人たち
1670年 町人貴族 1671年 プシシェ 1671年 スカパンの悪だくみ 1671年 エスカルバニャス伯爵夫人 1672年 女学者 1673年 病は気から
詩とソネ
1655年 相容れないものたちのバレエ 1655年 クリスチーヌ・ド・フランスに捧げる歌
1663年 国王陛下に捧げる感謝の詩 1664年 ご令息の死に際してラ・モット・ル・ヴァイエへ捧げるソネ
1665年 ノートルダム慈善信心協会の設立を記念する版画に付した詩 1668年 フランシュ=コンテを統治下に収められた国王陛下に捧げるソネ
1668年? ボーシャン氏のバレエのメロディーに付した詩 1669年 ヴァル・ド・グラース教会の天井画を称える詩
1671年? 美しいメロディーにのせた題韻詩
人物と関連項目
マドレーヌ・ベジャール アルマンド・ベジャール マルキーズ・デュ・パルク カトリーヌ・ド・ブリー ラ・グランジュ ミシェル・バロン ジャン=レオノール・グリマレ
盛名座 モリエール劇団 オテル・ド・ブルゴーニュ座 モリエールの医者諷刺 モリエール (列車)
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