ピアノソナタ第18番 (シューベルト)

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第1楽章 モルト・モデラート・エ・カンタービレ

第2楽章 アンダンテ

第3楽章 メヌエット:アレグロ・モデラート - トリオ

第4楽章 アレグレット
演奏:ランドルフ・ホカンソン(英語版)

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ピアノソナタ第18番 ト長調 作品78, D 894 は、フランツ・シューベルト1826年に作曲したピアノソナタ。一般に『幻想』(Fantasie)の愛称で親しまれている。

概要

本作はシューベルトが28歳の時の作品であり、このあとの同形式の作品は、晩年の3つのソナタ (『第19番 ハ短調』(D 958)『第20番 イ長調』(D 959)『第21番 変ロ長調』(D 960))しかない。完成された作風期に入り、規模も充実し、内容も優雅な大作である。

また、本作はシューベルトの生前に出版された最後のピアノソナタであり、後にドイツ作曲家であるロベルト・シューマンは、本作に対して「形式と構想において最も完璧である」と評している[1]

愛称の由来

幻想』という愛称は、初版の楽譜に「幻想曲」と記されていたことからそう呼ばれるようになったが、楽譜に「幻想曲」と記したのはシューベルト自身ではなく、初版を出版したトビアス・ハスリンガーが、本作の第1楽章に対して付けたものとされる[2]

曲の構成

全4楽章、演奏時間は約40分。主調であるト長調は、主に室内楽曲によく使われるなど柔和な印象を与えているが、本作では同時代人のベートーヴェンの作品の影響を色濃く感じさせる書法が多い。

  • 第1楽章 モルト・モデラート・エ・カンタービレ
    ト長調、8分の12拍子ソナタ形式
    発想記号の通り「ごく節度を持ってそして謡うが如く」演奏される。 冒頭から主題が提示される。第2主題は優雅なシチリアーノ。素朴な変奏の後に提示部が終わり、展開部に入る。展開部はト短調ニ短調など短調の昂揚があった後、第2主題が変ロ長調で左手声部に現れる。右手声部は同時に第1主題を奏でていて、各主題を統合した優れた作曲技術が認められる。 再現部は形式通り。コーダは最弱音で穏やかに締めくくっている。
  • 第2楽章 アンダンテ
    ニ長調、8分の3拍子、ソナタ形式(またはロンド形式)。
    本来は緩徐楽章をおくべきところ、前楽章がアレグロではないので均衡をとっている。重音が多く雄大な効果を出している。第1主題は多少変奏を伴って繰り返されるが、単純なものに抑えて全楽章の統一を図っている。
  • 第4楽章 アレグレット
    ト長調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ロンド形式
    ロンド主題は穏やかな右手主題を左手の4対1の同音連打が支えるもの。この4対1の同音連打は前楽章のメヌエットでも重要であり、ソナタ全楽章を支配している。途中ハ長調の活発な部分が現れる。ロンド主題をはさんで変ホ長調ハ短調の優雅な部分。ロンド形式どおりでコーダのシンコペーションが印象的。最後まで4対1の連打が顔を出している。

脚注

  1. ^ Grant Hirosima, for LAPhil.com.
  2. ^ McCreless, Patrick (Spring 1997). “A Candidate for the Canon? A New Look at Schubert's Fantasie in C Major for Violin and Piano”. 19th-Century Music 20 (3): 205–230. doi:10.1525/ncm.1997.20.3.02a00020. JSTOR 746862. 

外部リンク

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  • 第1番 ホ長調 D 157(未完)
  • 第2番 ハ長調 D 279(未完)
  • 第3番 ホ長調 D 459
  • 第4番 イ短調 D 537
  • 第5番 変イ長調 D 557
  • 第6番 ホ短調 D 566(未完)
  • 第7番(第8番)変ホ長調 D 568(変ニ長調(第7番)D 567)a
  • 第8番(第9番)嬰ヘ短調 D 571(未完)a
  • 第9番(第10番)ロ長調 D 575a
  • 第10番(第11番)ハ長調 D 613(未完)a
  • 第11番(第12番)ヘ短調 D 625(未完)a
  • 第12番 嬰ハ短調 D 655(未完)
  • 第13番 イ長調 D 664
  • ホ短調 D 769a(未完)
  • 第14番 イ短調 D 784
  • 第15番 ハ長調 D 840『レリーク』(未完)
  • 第16番 イ短調 D 845
  • 第17番 ニ長調 D 850『ガシュタイナー』
  • 第18番 ト長調 D 894『幻想』
  • 第19番 ハ短調 D 958
  • 第20番 イ長調 D 959
  • 第21番 変ロ長調 D 960

^a ()の番号はマルティーノ・ティリモ校訂によるウィーン原典版の番号

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